1、腹腔鏡手術 |
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腹腔鏡手術では、核出術と全摘術の両方を行います。核出術では、開腹手術と比べると傷が小さく、手術後の癒着も少ないという利点があります。
手術によって子宮や卵管がダメージを受けにくいので、術後に妊娠する可能性が高まります。
腹腔鏡手術は、小さな穴を通して遠隔操作で行うため、難しい手術といわれます。モニターを通して器具を操作するので、高い技術と豊富な経験が要求されるからです。
傷が小さく、癒着も起こりにくいという利点がある反面、執刀する医師の技術に大きく依存する手術でもあります。
また、特別な設備が必要なこともあり、施設によってはできない場合もあるようです。しかし、希望者は今後も増えると予想されます。
ちなみに腹腔鏡による核出術は、3泊4日入院した場合で50万円から60万円の費用がかかります。保険が適用できるので、自己負担はこのうち3割、16万円から17万円前後になります。
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2、開腹手術 |
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腹部にメスを入れ、切開して行う手術です。子宮全摘術、核出術、両方の場合で行われます。筋腫が大きく、また数が多い場合は、安全性、確実性から開腹手術が選択される場合が多いようです。
お腹を切らない手術と比べ手術時間は短く、全摘術の場合で1、2時間程度で終了します。出血量も少なく、輸血の必要もありません。
しかし術後の痛みは強く、入院期間は8日程度と、腹腔鏡手術の2倍ほど必要になります。
核出術の場合、子宮筋層を一部切開して、筋腫をくり抜いて取り除きます。その後でくり抜いた傷口を縫合するのですが、この傷の部分に癒着が起きて、卵巣や卵管、大腸、小腸とくっついてしまうことがあります。
このような癒着は、核出した人の7〜8割にも及ぶので、術後の経過観察が重要になります。
また手術後に出産するときは、筋腫を摘出した部分が弱くなっているので、帝王切開する場合が多いようです。
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3、子宮鏡下手術 |
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子宮鏡下手術は、粘膜下筋腫やポリープなど、子宮内膜に突き出ている腫瘍を、先がループ状になったメスで切り取る手術です。
あらかじめ経膣超音波や子宮鏡で診断し、手術に適するかどうかの診断が必要です。まれに手術中に激しい出血や癒着のために、腹腔鏡手術や開腹手術に変更されるケースもあります。
自然分娩の経験のある人は、子宮口が広がっているので問題ありませんが、そうでない人は手術の前に子宮口を広げる処置をします。
手術は全身麻酔で行い、手術時間は30〜60分程度です。お腹や子宮を切らないため、手術後の痛みが少なく、体への負担も軽いといえます。
入院期間も通常は2泊3日程度で、なかには手術の翌日に退院する人もいます。費用は2泊3日の入院で25〜40万円程度、うち個人負担分は10万円前後です。
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4、膣式手術 |
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お腹を切らずに膣のいちばん奥を切り、そこから子宮を全摘出する手術です。卵管や卵巣などを残したまま、子宮だけを切り取り膣から取り出します。卵管や卵巣は腹膜に縫い合わせます。
膣式手術の利点は、お腹を切らないために下腹部に手術痕が残らないこと、術後の回復が早いことなどです。
ただし膣が狭かったり、子宮が大きい、子宮の周囲が癒着しているような場合は、この手術は行えません。原則として、自然分娩を経験した人に行われます。
一方、デメリットは、手術のときに見える範囲が狭いために危険度が増すことです。そのため、安全を考えて補助的に腹腔鏡を使う場合が多いようです。手術時間は60〜120分程度。出血量は少なく、通常は輸血の必要はありません。
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5、新しい治療法 |
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最近行われるようになった治療法に子宮動脈塞栓術(UAE)があります。
これは、子宮動脈の血管内に入れた細いカテーテルから、血管を詰まらせるような物質を注入し、その先にある子宮筋腫に栄養が行かないようにして小さくしてしまおうという方法です。
この手術には強い痛みもないし、深い麻酔も必要ありません。
しかし、血流が途絶えるために処置後の数時間、強い痛みや発熱、吐き気、嘔吐が起こることがあります。この痛みは数日間、あるいはそれ以上続くことがあります。
また子宮に行く血液が完全に途絶えたり、感染が起こったりすると、子宮全摘術を行わなければならないこともあります。
アメリカでは、筋腫の大きさが3ヵ月で平均50%まで縮小したという臨床報告があります。しかし、再発や妊娠への影響など、長期的な影響がまだわかっていないので、現在では試験的な治療法です。
日本でも一部の病院で行われ始めましたが、健康保険が適用されないので、自由診療になります。 |