子宮筋腫と子宮内膜症(間違えやすい病気2)
子宮筋腫と子宮内膜症の区別がつかなかったり、2つの病気を混同している人は意外に多いようです。
子宮内膜症とは、子宮の内膜組織が子宮以外のところに発生し、その組織が子宮内膜と同じように女性ホルモンの影響を受けて、月経周期と同様に増殖したり、剥離して出血する病気です。
「子宮」という字がついているので、子宮の病気と錯覚しがちですが、実際は子宮の病気ではありません。
月経のある女性のうち10人に1人は子宮内膜症といわれています。また年々患者が増え、若年化する傾向があります。
最もできやすい部分は、腹膜、卵巣、そして子宮と直腸の狭い間にあるダグラス窩といわれる組織です。そのほか卵管、膀胱、直腸、膣などにもできますが、まれに肺、鼻くう、胸膜などの離れた組織にできることもあります。
子宮内膜組織が、なぜ子宮以外のところで発育するのかは、よくわかっていません。
子宮内膜と腹こう内は卵管を通してつながっているので、月経血がそこを通って逆流し、月経血に含まれた子宮内膜の組織が、腹こう内に運ばれて生育してしまったのではないかという説がありますが、証明はされていません。
月経の出血は膣から体外に排出されますが、子宮内膜症の場合は、出血しても体外に血液が排出されません。じょじょに古い血液がたまると、組織と癒着したり、血液のかたまりができてさまざまな問題を引き起こします。
子宮内膜症が、子宮の後ろ側にある腹膜に発生したものを「腹膜病変」といい、これは比較的軽い場合です。
ところが卵巣に発生し、古い血がたまってのう胞状に成長することがあります。これをチョコレートのう胞といいます。
チョコレートのう胞は周囲の組織と癒着しやすく、癒着の程度が強いほど月経痛が激しくなります。また、ダグラス窩に発生した場合も強い痛みを伴います。
1、子宮筋腫との違い |
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30代から多くなる子宮筋腫と違い、子宮内膜症は、20代からよくみられます。また月経痛が、月を追うごとに強くなっていく場合、痛みの程度はそれほどでなくとも、子宮内膜症を疑う必要があります。
また、月経でないときに下腹部が痛むのも、子宮内膜症の特徴のひとつです。排便のとき、脂汗が出るような痛みが肛門の奥まったところで起きることもあります。また性交時に、膣の奥に激しい痛みを感じることもあります。
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2、治療 |
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子宮内膜症は、エストロゲン(卵胞ホルモン)の作用で増殖、進行するため、月経のある女性だけに起こる病気です。逆にいえば、月経があるかぎり続く可能性があるので、完全治癒は困難です。
卵巣にチョコレートのう胞がある場合は、開腹を手術してこれを取り除きます。チョコレートのう胞があるために、通常3センチほどの大きさの卵巣が、9センチほどにふくらんでいる場合があります。
腹膜に数ミリ大の病巣がばらまかれたようにできることもありますが、この場合は開腹するか腹くう鏡を使って電気で焼き取ります。
子宮内膜症は、月経があるかぎり進行する病気なので、月経がない状態にして、進行を抑える方法がとられる場合もあります。月経がないのは妊娠中か閉経後です。つまり薬物によって、妊娠中や閉経後の状態を作り出すわけです。
妊娠中のようなホルモン状態を作り出すのを「偽妊娠療法」、閉経後の状態を作り出すのを「偽閉経療法」といいます。
しかし、子宮内膜症は再発率が非常に高く、根治するには手術しかありません。患者が妊娠を望まない場合は、子宮(ときには卵巣も)を含めて病巣部分をすべて取り除くことがあります。 |
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